更新日2025年07月23日
人事担当者インタビュー 株式会社三善

歴代の技能実習生たちを温かく支援し、その経験を生かして帰国後も活躍できるキャリア像を提示

川合利弘さん
代表取締役
株式会社三善

静岡県掛川市でスーパーマーケット「サンゼン」を運営する株式会社三善。同業他社との競争の中で埋没しないよう、こだわり抜いた食材の仕入れ、地域密着の商品開発やコラボ企画、買い物が困難な人を支援する移動スーパーなど先進的な取り組みを重ね、独自のポジションを築いている。

また、インドネシアの技能実習生の受け入れも積極的に行なっており、2025年から展開を始めた同社のインドネシアの店舗では、かつての技能実習生が中核スタッフとして活躍している。

代表取締役の川合利弘さんに、インドネシア人材活用の背景や今後のイメージについて話を伺った。

19歳の技能実習生を支えるため職場の結束力が高まった

――外国人材の受け入れを始めた背景は

当社には以前から外国人の従業員が在籍していましたが、スーパー業界のさらなるグローバル化を想定して、2017年にインドネシアの技能実習生2名の受け入れを始めました。インドネシア人材を採用した他社の事例も参考にして、本格的に取り組むことにしたのです。

インドネシアの技能実習生受入事業について豊富な実績がある協会に相談に乗ってもらっており、私たちの業務内容などもよく理解してもらったうえで、面接や採用も委託しています。

インドネシアの人々は温厚で親日家が多い印象で、日本人スタッフとの相性もいいと思います。こちらから人材のタイプやスキルについて特に細かいリクエストをしなくても、コミュニケーション能力も含めて三善にマッチした方をいつも推薦してもらっています。

技能実習生の仕事は、惣菜部門での調理業務が基本です。実習生はある程度日本語を勉強したうえで来日するので、日常会話など基本的なコミュニケーションに支障はありません。ただ、当然のことながら日本の調味料などについての知識はないので、醤油の瓶にインドネシア語のラベルを貼るといったフォローには気を配っています。

――インドネシア人材の評価は

これまでうちで仕事をしてくれたインドネシア人材の共通の印象として、真面目で、最後までやり遂げる芯の強さがあると思います。スーパーの惣菜部門では、天ぷらを揚げたり肉じゃがを作ったり、インドネシアでは未経験の調理を学ぶことになりますが、器用に身につけてくれます。

改めて振り返ると、最初に来てくれた技能実習生2名と社内のスタッフとの出会いがとてもよいものだったことが、その後の好循環を作ってくれたように思います。

両名とも19歳で、惣菜部門で働くパート従業員にとっては娘や孫のような世代ということもあり、皆から非常にかわいがられていました。二人が心細くならないように、パート従業員や先輩社員が声をかけたり食事に連れて行ったり、休日を利用して富士山に一緒に登ったりする様子を、私もほほえましく眺めていました。外国からの仲間を迎えたことで、「支えてあげなければ」という意識が自然発生的に浸透し、社内の結束が非常に良くなったのは、予期せぬプラス効果でした。

――現在の外国人材の受け入れ状況は

常時、複数名の実習生がいて、2名が帰国したら新たに2名来るようなサイクルが定着しています。店舗のすぐ近くにアパートを用意して、自転車も支給しています。日常の生活習慣も含めて、同じ建物に暮らす先輩が指導やサポートをしてくれるので、皆、問題なくやっています。

2025年6月現在はインドネシアの技能実習生が6名いて、7月にもう2名加わります。惣菜部門ということもあって、これまでの実習生はもっぱら女性でしたが、7月に来る2名は男性で、新しいかたちで社内を活性化してくれることを期待しています。

惣菜部門の従業員は12~13名で、インドネシア人従業員が8名になると、半数を超えることになります。基本的に日本人のお客様をターゲットにした食品スーパーなので、日本人の味覚に合わせた味付けの維持という観点からも、今後もバランスのとれた配置を意識していく必要がありますね。

また、2024年の法改正で、スーパーマーケットの食料品製造部門が特定技能の対象となったことは、私たちとしても対応の幅が広がると思っています。

インドネシアに帰ったあとのキャリアプランも提示可能

――社内で行なっている教育制度やキャリアアップ支援は

近所にお住まいの日本語の先生が、毎週月曜の14時から16時に業務時間の中で日本語学習の指導をしてくれています。先生からは「この子が苦手な部分を解消できるように、今このような方針で教えています」といった感じで、具体的なレポートをいただいています。アパートに実習生を集めて食事会を開いてくれるなど非常に面倒見のいい方で、実習生たちもLINEやWhatsAppで連絡を取り合うなど慕っている様子もあり、大変ありがたく思っています。

――インドネシア店舗の展開について

三善は、インドネシアの大型スーパーマーケット「GrandLucky(グランドラッキー)」と合弁会社を設立して、寿司・惣菜の専門店をオープン、2025年2月に1号店をグランドオープンし、5月に2号店を開業しました。今後も状況を見定めつつ、堅実に展開していきたいと考えています。

現地の店舗では、かつてうちで技能実習生として仕事をしてくれて、今はインドネシアに戻った人たちが社員として働いています。発注業務や在庫管理などにもコミットしてもらい、仕事の面白さを感じたり、成長意欲を抱いたりすることを促しています。今後、店舗統括などを任せられる人が出てくるかもしれませんね。

7月に来日する男性2名には、日本で3年ないしは5年仕事をしたあとで自国に戻ってからも、当人の意思次第では、インドネシアの店舗で正社員として活躍してもらえる選択肢を示しています。

日本で身につけた技能や知識を活かしてインドネシアで働くというキャリアプランを提示できるのは大きな特徴であり、強みだと思います。

――日本で働くことを希望しているインドネシアの方々へのメッセージ

当社で仕事をしていただく方は、惣菜部門の業務が基本となるので、やはり調理が好きな人であるというのが大前提です。これまでの技能実習生の成長ぶりを見ていても、「好きなことであれば習得も早い」ということを実感します。

インドネシアはコメ文化が浸透していることもあって日本食を好む方が多く、日本食チェーンも次々と進出しています。当社で身につけた技能や知識をインドネシアに帰って発揮してもらうことで、日本の食文化をインドネシアで広めていく大きな潮流に私たちも一役買うことができれば、という使命感を持ちつつ日々の仕事をしています。

特に、きわめて重要であり是非とも生かしてほしいと願っているのは、衛生管理のノウハウです。ジャパンクオリティーの厳格な衛生管理をインドネシアに持ち帰り、根づかせてもらうのは非常に意義のあることだと思っています。

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