昇給につながる評価制度やAIなどの最新の技術を生かしながら外国人材の成長を支援する

佐藤風音さん
ファシリティコンサルティング事業本部 ホテルサポート部 ホテル統括課 労務管理チーム
大和ライフネクスト株式会社
大和ハウスグループの一社として、マンションやビル、商業施設などの管理事業を行う大和ライフネクスト株式会社。ホテルの客室清掃を専門に担うホテルサポート部では、2018年から毎年インドネシアの技能実習生を採用している。2020年には現地法人を設立し、技能実習生の受け入れや支援を監理団体に依頼する「団体監理型」から企業独自で行う「企業単独型」に切り替えた。
同社で働く約800人の外国人材をサポートする、ホテル統括課 労務管理チームの佐藤風音さんに、彼女たちがイキイキ働くための体制づくりを伺った。
ホテルからも「現場が明るくなった」と高評価

――インドネシア人の採用を始めた経緯は
大和ライフネクストは、ホテルやマンション、ビル、商業施設などの管理事業を行う会社です。ホテルサポート部はその中でも客室清掃に特化した部署で、全国各地のホテルでサービスを提供しています。以前はそれぞれの土地でスタッフを採用していましたが、清掃業は慢性的な人手不足で国内人材が集まりにくいことから、2018年より技能実習生の採用を始めました。
インドネシアを選んだ理由は、素直で明るく元気な方が多く、気質が日本人に似ていると聞いていたからです。第一期生の100人は、私たちが抱いていたイメージの通り、元気で真面目に取り組んでくれました。派遣先のホテル様からも、「笑顔であいさつをしてくれる」「現場が明るくなった」というお声をいただきました。
――採用の流れは
当初は外部機関に委託していましたが、2020年に現地法人のPT DAIWA LIFE NEXT INDONESIAを設立してからは企業単独型に移行しました。現在は、私たちが希望する人材像と人数を現地法人にオーダーし、選考を行なってもらっています。
選考は面接と実技試験の二つを行い、「日本で働くうえで志(目標)を持っているか」を重視して採用します。当社はお客様へ高品質なサービスを提供するため、社員一人ひとりが高い志をもって日々の業務に向き合っています。そのため、志高く、熱心に仕事に取り組む意欲がある方に仲間になってほしいと考えています。
客室清掃はきめ細やかで丁寧な仕事が必要で、お客様から期待されるレベルも高いです。決して簡単な仕事ではないからこそ、「なんとなく日本に行ってみたい」という軽い気持ちだと、そのうち仕事が嫌になってしまうと思います。そうした意味でも、目的意識があるかどうかは非常に大切ですね。
実技試験では、指示に対する正確性や作業に対する姿勢もチェックします。実際に手を動かしている姿から「この方は少しおおざっぱなところがありそうだ」「几帳面な性格なのかもしれない」など、個々の性格も見えてきます。
AIやeラーニングを活用し約800人をサポート
――外国人材のサポート体制は
統括課内の技能実習生チーム(通訳含む)が中心となり、現場と連携しながらサポートしています。当社には約800名の技能実習生・特定技能生がいるので、仕事や生活に関する問い合わせが1日に50~60件ほど来ます。その内容は「洗濯機が壊れた」といった日常の困りごとから職場の人間関係までさまざまで、全てを人力で対応するのには限界があります。
そこで、チャットボットを活用した自動問い合わせシステムを作り、相談内容に応じて効率よく適切な返答ができるようにしました。これにより、家電の使い方や生活ルールなどの答えが決まっているものはAIが自動で回答し、ヒアリングが必要なものは通訳につなげるといったフローを構築することができました。

――仕事面のサポートは
現在当社で管理している全国56棟のホテルに合わせて作成した「清掃手順書」を、日本語とインドネシア語で用意しています。これは各ホテルやルームタイプごとに1室あたりの清掃時間を想定し、秒単位で算出したもので、画像や図を用いてわかりやすく説明しています。
また、技能実習生の入社初日には全国の事業所をリモートでつなぎ、ベッドメイクの方法や客室清掃のルールといった基本的な業務を1日かけて学ぶeラーニング研修を行います。それ以外にもスタッフへのeラーニング研修を月1回実施しており、ベッドメイクや清掃のポイント、アメニティの扱い方などのテーマを受講してもらいます。教材は当社が独自に作成しており、実技と解説を交えた5~7分ほどの動画をコンテンツごとに用意しています。

――サポート面で工夫していることは
生まれ育った環境や文化が違うことを念頭に置き、丁寧にコミュニケーションを取っています。日本とインドネシアでは普段話す言葉はもちろん、学校や家庭で教えられてきたことも違います。私たちにとっての当たり前は、彼女たちにとっての当たり前ではないと考えながら、伝え方を工夫しています。
以前はこうした前提を理解せずに接してしまうことも多く、予期せぬ出来事が発生したこともありました。特に印象深かったのが、郵便物の発送をお願いした時のことです。あるスタッフに「この郵便物をポストに入れて会社に送ってください」とお願いしたところ、自宅の郵便受けに手紙を入れてしまい、いつまでたっても届かないということがありました。インドネシアでは郵便ポストが置かれていない地域が多いこともあり、勘違いしてしまったようです。
私たちが「このくらいは言わなくてもわかるだろう」と勝手に判断せず、どこまで具体的に伝えるか、どういう言い回しがわかりやすいかを考えながらコミュニケーションを取るのが大事だと常々感じますね。
大和ライフネクストで働いてよかったと思ってほしい

――仕事の評価制度はあるか
3ヵ月に1回、等級制度に照らした評価とフィードバックを実施しています。等級制度には「Hotel Make Crew(以下、HMC)」と「Hotel Make Expert(以下、HME)」の二つを設けており、HMCは客室清掃見習いから始まり副責任者まで、HMEは現場責任者レベルの実力により等級の異なる評価制度を設けています。
ステップアップの段階に応じて昇給し、HMEになるとぐっとお給料が増えます。大きな成長を感じられる機会ということもあり、多くのスタッフがここを目指しています。また、HMEには技能実習生の入社式で全スタッフを代表したスピーチをしてもらうのですが、これも「やりたい!」と言ってくれるスタッフが多いですね。
この評価制度を始めたのは、現場で頑張っているスタッフに「大和ライフネクストで働いてよかったと思ってほしい」と考えたことがきっかけです。技能実習生は日本で働ける期間が3年と決まっていて、特定技能に切り替えたとしても最長8年しかいられません。3ヵ月に1回の評価には、正直多くの時間と労力がかかりますが、限りある時間の中で「この会社で働いてよかった」と感じてもらえるように、本人たちが成長を実感できる機会を作ろうと思ったのです。
――今後の展望は
ホテルの清掃事業はまだまだ拡大フェーズにあり、これからも多くのスタッフとともに素晴らしい仕事を創り上げていきたいと思っています。インドネシアの皆さんは本当に優秀ですし、同じ国の先輩が後輩を指導してくれる体制も整ってきました。
現在当社では、技能実習生のうち7割が特定技能に移行してくれています。今後も、技能実習が終了しても長く「大和ライフネクストで働き続けたい!」と思ってもらえる環境・職場を作っていきたいと考えています。
――日本で働きたいインドネシア人にメッセージを
これまで当社で働いてくださったインドネシアの先輩たちは、高い責任感を持って仕事に励み、お客様からの厚い信頼を勝ち取ってきました。彼女たちのようにしっかりとした志を持って働いてくださる皆さんのお力を、今後もぜひお借りしたいと思っています。
日本で働くためには、日本語力は絶対に必要です。活躍できるチャンスが訪れた時に「自信がない」という理由で踏みとどまってしまうのは、本当にもったいないことです。早い段階から勉強を始め、自分から日本語を話す機会を作るなど、アウトプットの数を増やしていけば、きっと早く上達するはずです。
私たちは皆さんの挑戦を全力でサポートします。新しいキャリアを切り開く一歩を、ぜひ一緒に踏み出しましょう。皆さんと一緒に仕事ができる日を心待ちにしています!