更新日2025年06月06日
人事担当者インタビュー 富士見産業株式会社

インドネシアの現地法人や日本語学校と提携して有望な人材を継続的に採用できるルートを構築

富士見産業株式会社
取締役 経営企画部長

前田光一さん

総合ビルメンテナンスをはじめ、ホテルや病院、工場、学校などの清掃業務を請け負う富士見産業株式会社は、外国人材の大半をインドネシア出身者が占める。その理由や採用ルートなどについて、自ら現地に赴き面接段階から携わっている経営企画部長の前田光一さんに伺った。

外国人材の約90%がインドネシア出身

――積極的に外国人材を採用するようになった経緯は

2019年あたりから、外国人材の採用に力を入れていこうという話が社内でありました。一番の要因は長野支店で請け負っていたホテルの清掃スタッフが不足していたこと。地元の若い人材の採用がなかなかうまくいかなかったので、会社の近くにある日本語学校に在籍されていた中国やベトナム、フィリピン、インドネシアなどの生徒さんたちにアルバイトで働いていただいたんです。すると「外国人材いいじゃないか」と全社で評判になって、正社員雇用へとつながりました。

――現在の外国人材の採用状況は

すべて正社員として採用していて、全体で50人弱。そのうち40人以上がインドネシア出身で、あとはネパール、カンボジア、フィリピン、ベトナムが1人ずつ。社内で初めて特定技能1号を取得したのがインドネシアの方たちで、その後は自国に戻られましたが、「自分たちに続く後輩と会社をつなぐ役割を担いたい」と、地元の知人・友人を紹介してくれたんです。それでインドネシア出身者が年々コンスタントに増えていきました。現場で一緒に働いている日本人社員からもインドネシア人社員は好評だったので、会社としてもどんどん採用しようと。

国籍が多岐にわたれば、その数だけ通訳担当の社員が必要になりますし、我々もさまざまな文化や慣習に適応していかなければならない。国籍を絞ることでそういった労力も軽減されてマネジメントがしやすくなりますし、ほかにも同郷同士でいろいろと教え合えるなどのメリットがありますね。

――どのようなルートで外国人材を採用しているか

先ほどお話しした元社員たちがインドネシアに現地法人を作って、弊社に人材を送り出す窓口になっています。さらに今年の1月には日本語学校を開校しました。その学校の卒業生が社員候補になるので、設立までの準備期間には私も現地に滞在して、入学希望者の面接などに立ち会いました。今回は約80人が受験して、合格者は24人でした。

同校では単に日本語の学力を上げる教育ではなく、日本語での会話に特化した授業を推進することをお願いしています。求めているのは日本語能力試験(JLPT)のN3、N2ではなく、日本人と日本語でいかにコミュニケーションを取れるかどうか。その上で我々が考える外国人材の即戦力は、日本語が多少つたなくても清掃の技術を持っている人です。現地でベッドメイキングを習得後に来日すれば、それで十分即戦力ですから、実務的な指導も行っていただきます。有望な外国人材を、できるだけ合理的に受け入れるための仕組みを構築している最中ですね。

通訳専門の社員を講師に日本語の勉強会を毎週実施

――面接の際に重視しているポイントは

志望者の能力や人間性をより正確に把握するには、対面式で数人のグループ面接が最も適していると思います。以前オンラインで面接を行った際、画面には映らないように、日本語学校の関係者が隠れて学生に助け舟を出していたこともあったんです。

面接で特に注目している点は、真面目かどうか、日本語をちゃんと勉強しているか、困った時にどういう反応をするかなどです。だから、苦労した経験や失敗したエピソード、ストレスを感じた時の解消法など、割と日本語で答えにくい質問を投げかけることが多いです。日本語の能力は後付けできるけれど、ピュアな性格はそうそう身に付けられるものではないので、そこは徹底して見させていただきます。

またグループ面接で、自分の番が終わってほかの人が質問されている時に、どういう態度をしているかも非常に大事。気を抜いて姿勢が悪くなったり、ボーッとしたりしていないか。我々はサービス業ですから、入社後にお客様の前でもそのような態度を出されては困りますので。

――インドネシア人材の印象・評価は

チームで仕事をする場合などに、日本人と一番合うのがインドネシアの方々ですね。外国人材の中には主義主張が強くて周囲との調和が難しく、職場での人間関係が課題となるケースもありますが、インドネシアは公の場で他人を咎めたり、叱ったりする文化がないのでトラブルが起きることもほとんどありません。

ただ、それが時にはマイナスに働くこともあって、実際は自分に非がないとしても、その場を穏便に収めるために飲み込んでしまったりする。本音を聞き出すのが難しいということはありますね。

――社内で行っている外国人材への教育・支援

インドネシアの大学の日本語学科を卒業した、通訳専門の社員たちが講師となって毎週1、2回、日本語の勉強会を行っています。外国人材が最も多い長野支店の2階が会場で、そのほかの支店の社員には教材をPDFで送り、オンラインで参加してもらっています。今は日本語能力試験(JLPT)のN4・N3の受験対策が中心になっていますが、今後は現場でよく使われる単語や用語などを覚えるといった、より実践的な授業にしていきたいです。

特定技能2号に向けた対策としては、一番長く在職している特定技能1号の人たちが3~4年目に入る時期なので、これから本格的に取り組んでいきます。すでに特定技能2号用の勉強会を実施している、同業他社から講師にきていただくことなども考えています。2号を取得すると現場監督や責任者などのマネジメント業務もできるようになるので、そういった役割も期待したいですね。

――日本での就職を目指す外国人材へメッセージを

外国人材に対して常に優しく接することが必ずしも皆さんのためになるとは思わないので、間違っていることをしたら通訳を通して伝え、納得するまで会話を重ねて判断してもらうようにしています。「そうしたスタンスは厳しすぎる」と時折外国人材からも言われますが、我々には外国人材を守ることと同時に日本人を守る責務もあるので、あくまでフラットにかつ合理的に。そして時には熱い気持ちで、外国人材一人一人のことを思って雇用し続ける。そういう人とのつながりを大切にする企業でありたいと思っています。

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