更新日2025年06月17日
人事担当者インタビュー メディカル・ケア・サービス株式会社

全国の事業所で特定技能を採用して現場の状況に合わせた働きやすい環境づくりを行う

メディカル・ケア・サービス株式会社
事業統括本部 採用推進部 採用推進課長

伊藤隆宏さん

認知症の高齢者を対象とした介護施設「愛の家グループホーム」を運営する、学研グループのメディカル・ケア・サービス株式会社。全国360ヵ所以上の事業所を構えるこの会社には、150人を超える特定技能生が在籍している。

同社の中で最も多くの特定技能生が働く愛知・岐阜エリアで、外国人材採用に携わる採用推進課の伊藤隆宏さんに、採用のポイントや現場のサポート体制について話を聞いた。

勉強熱心なインドネシア人は現場からの評価も高い

――いつ頃から外国人材の採用を始めたのか

介護業界の人手不足を補うために、4年ほど前から特定技能人材の採用を始めました。学研グループは国内外で事業を展開しているので、当社でもグローバルな視点で人材を確保しようということになりました。

最初に特定技能生を受け入れたのは愛知県と千葉県で、その後は他のエリアでも徐々に採用を開始。彼らは介護の仕事に対する適正が高く、離職率も低かったのでトントン拍子に進みましたね。

国籍はベトナムから始まり、現在はネパール、インドネシア、ミャンマーなどから来ていただいています。私が担当する愛知・岐阜エリアは自動車産業が盛んで外国人の比率も高いせいか、他のエリアと比べると応募数が多いと思います。

――インドネシア人を採用した感想は

穏やかでホスピタリティのある人が多く、高齢者のサポートに向いていると感じます。仕事への意識も高く、勉強熱心な印象がありますね。

介護は大変な仕事なので、最初の面接ではイメージとのギャップがないようにあえて厳しい話をするのですが、「問題ない」と即答する人がほとんど。入社後も仕事を真面目にこなしてくれますし、現場からのクレームもありません。

また、他の国の方と比べて日本に来る目的が明確です。「10年ほど日本で働いてから母国に帰って介護の技術を生かしたい」という人もいれば、自分の国に介護施設を建てる夢を持っている人もいます。インドネシアにはまだ本格的な介護施設がないので、そうしたところに可能性を見出しているのかもしれません。

多様な信仰をお持ちの方々の文化に馴染みがなかったため、お祈りやヒジャブ、食事の習慣などについて、受け入れるための職場環境を整えられるか不安でした。しかし、事業所としても業務に支障がないように働きやすい環境を整備したことで、そうした問題は一切ありませんでした。

苦しい場面でも笑顔が出るかが採用のポイント

――面接で重視するポイントは

リスニング力や会話力を中心に、業務を滞りなく進行できる語学力があるかを重視します。私の場合は「日本人と同じ面接をして6割受け答えできるか」を基準に見るので、現地の気温や得意な料理などの世間話から入ることもありますね。

介護や認知症に関する質問は試験対策がされているので、教科書に書いてあるような難しい言葉でスラスラ答える人が多いんです。しかし、そこから少し話が逸れるとうまく返答できなかったり、質問と違う答えが返って来たりということがよくあります。意地悪に見えるかもしれませんが、彼らが日本に来てから困らないように、あえて話を脱線させて生の語学力を見ています。

一方で、うまく受け答えができなくても笑顔を見せるなど、表情でコミュニケーションが取れる人は高く評価します。利用者は認知症の高齢者なので、常にお互いが初対面というような緊張感の中で仕事をする場面がほとんど。そうした環境で笑顔が出るかどうかもその人が持つスキルなので、よく観察しています。

あとは、目標を明確に持っているかという点ですね。ただ「介護福祉士になりたい」というだけでなく、その先の目標があるかを聞いています。やはり、夢を持っていれば苦しいことがあっても諦めずにがんばれると思うので。

また、その夢に対して努力できるかを確認するために、普段の学習時間も確認しています。仕事をしながら日本語や介護福祉士試験の勉強をするとなると、本当に忙しい5年間になるので、毎日2~3時間は勉強に時間を充てられる人でないと厳しいかなと考えています。

――会社で設けているサポート制度は

資格取得支援としては、実務者研修の受講費支援(上限あり)や、特定技能満了後も働ける在留資格「介護」の取得に必要な介護福祉士受験前講座の開催があります。そのほか、合格後に国家試験の受験手数料支援もありますが、彼らの仕事場は各事業所なので、基本的には現場にお任せしています。難しい漢字にルビを振ったり、気軽に相談しやすい雰囲気を作ったりと、事業所ごとにそれぞれ工夫しているようです。外国人だからといって特別な制度を作るのではなく、必要とされた時にきちんと対応してあげられるかが大事だと思っています。

また、愛知・岐阜エリアでは、約3ヵ月に1回の頻度で特定技能生向けの合同勉強会を開催し、つまずきやすい言葉や介護福祉士の試験の問題の意味を説明したり、過去問を解いてもらったりしています。勉強会の冒頭には、日本語力の向上とアイスブレイクを兼ねて「最近ハマっているもの」「初任給で買ったもの」などのテーマに合わせた自己紹介を行います。

中には他の事業所の特定技能生と交流できる場として、この勉強会を楽しみにしている人もいるようです。今は愛知・岐阜エリアだけの取り組みですが、今後は他の事業所でも行なっていく予定です。

介護福祉士になった後もキャリアアップを目指して

――今後外国人材に期待することは

人手不足の解消を目的に始めた外国人採用ですが、今はやる気や能力の高い人材として彼らを選んでいます。今働いてくれているスタッフたちが4年間で実績を作ってくれたおかげで、丁寧な仕事や優しい心遣いが利用者に伝わっていますし、ご家族からも働きぶりが評価されています。

ゆくゆくは、そんな彼らにもリーダーや管理者になってもらいたいです。実際に、介護福祉士の資格を取った中国人スタッフには今年から指導側に回ってもらっています。外国人のリーダーが増えれば、今後日本に来る人にとって身近な目標ができますし、教える側も勉強を続けるきっかけになると思います。採用する側もモデルケースを示しやすいので、一石三鳥ですね。

私たちは日本人・外国人の区別なく、すべてのスタッフを一職員として見ているので、能力のある人がどんどん上のポジションに行ってくれたらいいなと思います。

――日本で働きたいインドネシアの人たちにメッセージを

特定技能は労働力として日本に来てもらうためのビザなので、1人のスタッフとして、高齢者の命にかかわる仕事をするという認識を持っていただきたいです。「日本で働きたい」と考えている人はインドネシア以外の国にも多くいるので、自分たちの働きぶりによっては後輩たちの就職にも影響があることを忘れないでください。

介護の仕事も、介護福祉士の資格を取るのも本当に大変です。夢をつかめるかは皆さんの努力次第ですが、私たちもできる限りサポートします。同じ目標に向かって、一緒にがんばりましょう。

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