大ヒット商品『ガリガリ君』シリーズなどで知られる日本有数のアイスクリームメーカー・赤城乳業株式会社では、埼玉県深谷市と本庄市に構える二つの工場で多くのインドネシア人材が製造業務に携わっている。その背景について、担当者の山﨑裕祐さんと冨田泰成さんに話を聞いた。
日本人社員との“交換日誌”で日本語がどんどん上達

――外国人材を採用するようになったきっかけは
山﨑:工場の製造部門の人員として、約20年前から年間20名ほど外国人技能実習生を受け入れていました。あるとき技能実習生の監理団体より「親日国であり、日本文化への関心が高く国民性もすばらしい」ということで勧められたのがインドネシア人材でした。
同じ頃、テレビ番組で特集されていた現地の送り出し機関の活動の様子を見て大変共感したこともあって、2015年からインドネシア人材の採用にシフトしました。
――現在のインドネシア人材の採用状況は
山﨑: 2年前から特定技能も始めて、深谷工場と本庄千本さくら『5S』工場合わせて約35名の特定技能1号が在籍しています。特定技能は新規の採用だけでなく、技能実習中に特定技能の試験に合格した方を対象に社内面接を行い、合格した方に継続して働いてもらっています。そして、技能実習生から特定技能になった業務経験のある方が、新規採用した技能実習生や特定技能生を教育していくという好循環もできています。
ただ、昨今は大手企業もインドネシア人材にかなり注目していて、優秀な人材の獲得が難しくなりつつあるので、給与や制度の待遇改善を行うことで、より優秀な人材の確保や、今いる方々が安心して継続的に働けるように進めています。
――面接ではどんな点を重視しているか

冨田:主に次の2点です。まずは日本人や日本語、日本の文化への興味・関心が深いこと。そういう方は日本に来てからもモチベーションが高く、やる気を失うことなく仕事に取り組んでくれています。それに加えて、特定技能を取得して日本で長く働きたいという意欲を持っていると、より望ましいですね。
日本語能力試験のレベルなどは、あまり重視していません。若干でもしゃべることができれば、あとは入社後に頑張って勉強してもらえれば大丈夫です。
――業務上、必要とされる日本語の習熟度は
山﨑:工場内にはインドネシア語で書かれた作業マニュアルがありますし、インドネシアの先輩もたくさんいるので、仮に日本語には全く自信がないという人でも問題なく働けるような環境が整っています。しかし、ある程度はしゃべれる方々が来られていますし、こちらから促さなくても自主的に勉強してどんどん上手くなっていく人がほとんど。それほど日にちを要せずに、日本人スタッフともちゃんとコミュニケーションが取れるようになっています。
冨田:会社主導で行っているフォローの一つとして、日本人社員との“交換日誌”があります。「今日は工場でこんな仕事をしました」「家に帰ってからは○○をしました」といった1日の出来事を日本語で書いて、土日の分も含めて毎日提出してもらっています。それを総務部の担当者が読んで、日本語の使い方などを添削してお返しします。たまに何日分か溜めちゃう人もいますが、日本語能力試験を受ける人にはよい勉強にもなっているんじゃないでしょうか。
インドネシア人材は工場の重要な戦力

――生活面でのサポートや福利厚生について
山﨑:技能実習生と特定技能の方々には、工場の近辺にある会社で借り上げたアパートに住んでいただいています。借り上げアパートへの入居時には、家電や日用品、当面の食料品を会社で買い揃えてからお迎えしています。
冨田:頭から足までスッポリ覆われた製造着を着て1日8時間、工場の中で働くとかなり疲れます。皆さんに少しでもリフレッシュしてほしい、日本を楽しんでほしいという思いから、社内では定期的にさまざまなイベントを催しています。
入社時には近くの焼肉屋さんなどで歓迎会。11月は社員旅行で、毎年何コースか用意されています。昨年は北海道、那須、東京、横浜、岡山、福岡など。行き先によって自己負担額に違いがありますが、自分が行きたい場所を選ぶことができるので大変好評です。
技能実習生は1年間の最後にお疲れ様の意味も込めて、「日本のおもてなしを体験する」を研修のテーマとしてディズニーランドへ行くのが恒例。それ以外に自分たちで体育館を借りてレクリエーション大会を開くなど、二つの工場間で親睦を深めたりもしているようです。
――インドネシア人材の印象、勤務姿勢などについて
冨田:真面目で勤勉で、仕事に対してすごく貪欲。日本人以上に「もっと働きたい」という意識が高く、残業も積極的に「やりたいです」と申し出てくれるので大変ありがたいです。
性格的には協調性があって温厚なので、日本人との相性が非常によい気がします。他の外国人材の時は何かとトラブルがあったけれど、インドネシア人材は一度もない。いつも笑顔で「冨田さ~ん」と気軽に挨拶をしてくれます。本当に「いい子たちだなあ」と思いますよ。
本来はサポートする側の我々が、逆に彼らに癒されたり元気をもらったりしている。仕事の面だけでなく、気持ち的にも助けられている部分が大きいですね。

――日本語能力試験や特定技能の対策について
山﨑:日本語能力試験に関しては、初回の受験料は会社が負担しています。こちらから受験を推奨することは特にしていませんが、N4を持っていない人はN4を、次はN3を進んで受験する流れができています。
特定技能は2022年に入社した1名が先月、弊社では初となる2号の試験合格者になりました。我々にも2号の試験を受験するにあたっての経験やノウハウがなく、本人には公開されているテキストでひたすら勉強してもらい、月に一回、私と2人で勉強会を行い、テキストでのわからない部分を確認していきました。
特定技能2号になれば永続的に日本で働けるようになるので、合格した方にはもっともっと会社で活躍していってほしいです。また、今後特定技能2号の試験を受ける方へのフォロー体制もさらに整えていきたいです。
――日本での就職を目指す外国人材へのメッセージ
冨田:『ガリガリ君』という日本人なら誰でも知っているようなアイスの会社で働くことは、大きなメリットの一つになるのではないかと思います。入社されたら私たちが全力でサポートさせていただきますので、優秀な皆さんの来日をぜひお待ちしています。
山﨑:現在ではインドネシア人材の方々は工場の重要な戦力です。日本人の社員にも引けを取らないほど非常に有能ですから、皆さんの活躍にすごく期待しています。今後は特定技能生の評価・待遇の見直しなどを含めて会社の制度をしっかり整え、日本で長く働いていただけるように努めていきたいと思っています。
