「日本で長く働きたい」熱意ある
外国人材が成長できる環境づくりの
秘訣とは
オイシーズ株式会社 人事部 部長
田中 大督 さん

「つじ田」「金子半之助」「田中商店・田中そば店」などの飲食チェーンを運営するオイシーズ株式会社(以下、オイシーズ)は、全社員のうち3割以上が外国籍スタッフだという。「日本で長く働いてほしい」という思いから特定技能2号の取得に向けたサポートも行っている。 人事部部長の田中大督さんに、外国人材の採用や教育に関する取り組みを伺った。
日本人も外国人も一緒に働く環境が最初からあった

――外国人材に注目した背景は
一般的に、外食業は就職先としてはあまり人気がなく、「誰もがやりたい職業か」と聞かれるとそうではありません。それに加えて、少子高齢化や労働人口の減少により人手不足がますます深刻になっています。そうした課題を解決するために、私たちは外国人材の採用に力を入れています。
実は、当社を代表する飲食チェーンの「つじ田」「金子半之助」「田中商店」は、それぞれ別のオーナーが経営していました。2016年10月にオイシーズがM&Aを行って現在の体制になりましたが、それ以前からすでに外国籍の方々が働いていて、さまざまな国籍の人が働ける土壌ができていたのです。こうした環境は、外国人材を積極的に採用するという当社の方針とも合致していました。
3つのチェーンの中で、最初から外国人材が多かったのが「つじ田」です。現在外国籍のマネージャーがグループ全体で4名ほどいますが、そのうちの3名が「つじ田」で勤務しています。彼らは日本にずっととどまって働けるビザを持っているので、将来にわたって長く日本にいることになりますね。
――インドネシア人材の採用状況は
当社では国籍にこだわらず採用しています。最初に在籍していたスタッフの多くがミャンマー人だった関係で、今もミャンマー人材の比率が高いですが、ご縁があってインドネシア人材も採用しています。
一番多いのは「田中そば」で5名です。そのほか「金子半之助」と「つじ田」に1名ずつ、合計7名が働いています。ただ、インドネシア人で店長になっている人は今のところいません。5名が副店長、残りの2名が一般社員です。
――採用で重視しているポイントは
やはり日本語ですね。日本語能力試験(JLPT)でN3レベルは取得しておいてほしいです。外国人材が多いとはいえ、仕事を教える人は日本や他の国の出身であることが多いからです。
例えば、ミャンマー人のスタッフがインドネシア人のスタッフに仕事を教える時も、お互いの共通言語として日本語を使います。全員が日本語で指示出しやコミュニケーションを取ることでやり取りがスムーズになりますし、早期の戦力化にもつながります。
また、「日本で長く働きたい」という思いがあるかどうかも重要視しています。特定技能1号の場合は在留期間が最大5年ですが、2号になると制限がなくなるのでより長く働けます。2号を取得するには副店長や店長になる必要があるので、上の立場を目指すことでどんどん成長していってくれるのでは、という期待もあります。

――外国人材の働きぶりを見て感じること
「国のために、家族のために」という思いで仕事を頑張っている人が多いと感じます。そうした気持ちは仕事に現れますし、「日本で長く働きたい」というやる気にもなります。そうした前向きな姿勢は、私たちにとっても非常にありがたいです。 現場からは「どのスタッフも黙々と仕事をこなし、真面目にやってくれている」という声が聞こえます。日本語を熱心に学んでいる人も多く、始業前に1時間ほど日本語のテキストを読む人や、終業後に頑張って勉強している人もいるようです。そうした彼らの勤勉さは、私たちから見ても本当にすごいと思いますね。
受講費の補助や試験日程の案内など、特定技能2号を取得するためのサポートが充実

――外国人材向けの教育制度について
「つじ田」と「金子半之助」では食器洗浄機の使い方など、作業の流れを視覚的に説明する研修動画を用意しています。 マニュアルは母国語や英語で作らず、日本語のみを用意しています。理由としては、日本語をしっかり覚えてほしいからです。 先ほども話した通り、私たちは外国人材の方々に日本で長く働いてもらうために、将来的には特定技能2号を取得してほしいと考えています。特定技能2号の試験では、日本語をしっかり理解していないと答えられない問題が出されるので、仕事とともに日本語のレベルも上げてもらう必要があります。そのため、日本語のマニュアルで仕事を覚え、わからなければ自分で調べてもらうという形式を取っています。 そのほかにも、業態ごとにさまざまな教育制度を設けています。「金子半之助」では入社したてのスタッフをトレーナーが指導・フォローする環境づくりを行っているほか、「つじ田」ではマネージャーから直接指導が受けられる「白帯研修」を全スタッフに行います。いずれも、早く戦力になってほしいという思いから取り入れています。 また、もともと外国人材が多かったこともあり、彼らが仕事をする上での「サイクル」のようなものが店舗の中でできているように思います。 当社では「今月入社するスタッフ8名のうち4名が外国人材」ということがよくあるので、配属の店舗ではすでに外国籍スタッフの先輩が働いています。 日本人しかいない環境であれば、教える側もどう指導すればいいか戸惑ってしまうでしょう。しかし、同じ立場を経験した外国籍の先輩は彼らの気持ちがわかるので、自分の経験をもとに仕事を教えてくれているようです。 「つじ田 恵比寿店」の副店長・プラタマさんも「ミャンマー人の店長がいろいろ教えてくれた」という経験を経て、今は人を育成する立場になりました。彼が働く店に新しい外国人材が入社したら、しっかり仕事を教えてくれるはずです。
――外国人材向けに用意しているその他の制度・サポート
特定技能2号の取得に向けた講座受講費の補助や合格お祝い金の進呈などを行っています。また、受験を希望する人には専用のチャットグループを作り、試験のタイミングが来たら随時案内やサポートを行っています。 これらを活用していただき、先日2名が特定技能2号を取得しました。1月には3人目の方が試験を受け、現在は結果待ちという状況です。 今後もっとサポートしていきたいと思うのが、試験内容のフォローです。例えば「計数管理」という分野では人件費や食材管理に関する問題が出るのですが、今の日本の店長や副店長が受けてもどれだけわかるのか……という内容だったりします。全スタッフにこうした教育を行うことで仕事の理解が深まるので、本当の意味での資格取得の支援になると思います。
――今後外国人材に期待する点は
当社では今後、それぞれのチェーンで年間5店舗ずつ出店していきたいと考えています。それだけスタッフの数も、マネージメントができる人の数も必要になります。私たちとしても皆さんに長く活躍してほしいと思っているので、「将来はマネージャーを目指したい」と思ってもらえるような人に入社していただきたいです。 そして、ぜひ特定技能2号を取得していただき、最終的には「永住者」や「定住者」と呼ばれる在留資格を取っていただけたらと思います。
――将来日本で働きたいと考えているインドネシア人へのメッセージ
インドネシアには、やる気がある若者たちがたくさんいらっしゃると聞いています。当社はどんどん成長していく会社なので、そういった若くてやる気がある人たちが必要です。日本で働くチャンスをつかみたいのであれば、ぜひ扉を叩いていただきたいと思います。 日本で活躍するためには、やはり日本語が一番大切です。日本語をしっかり話せるということは、仕事だけでなく日常生活のさまざまな面にも役立ちます。長く日本で暮らしたいという人は言語の勉強も頑張っていただきたいです。