ロボットなどを活用する日本の技術力に夢を抱いた
インドネシアの大学を卒業後、約10年間にわたり糸を製造する工場で働いていたディディさん。インターネットで日本の技術を目にしたことがきっかけで、日本で働きたいと思うようになった。
「ロボットなどの最新技術を使って、効率よく作業を進めていることに驚きました。こんな夢のある技術を学びたいと思い、日本で働く道を考えるようになったのです」

2006年に技能実習生として初めて来日し、愛知県名古屋市にある自動車部品の工場で3年間勤務。実習期間を終えてインドネシアに帰国したあとは、機械加工の仕事に就く一方で、休日には農家である父の手伝いでトマトや小松菜、トウガラシなどの栽培・収穫に携わった。
この経験を生かし、今度は農業の技術を学ぶために日本で働くことを決意。2022年に特定技能の試験に合格し、翌年には長野県富士見町を拠点に農業・食品製造を手がける株式会社栄農人に入社した。
収穫時期のピークには畑の作業を手伝うことも

ムスリムであるディディさんは、毎朝4時に起床し、日課であるお祈りを行う。朝食や弁当の準備を済ませたあと、7時にはアパートを出発する。自動車免許を持っている彼は、同じ会社に勤める外国人スタッフを順番に迎えに行き、8時の始業に間に合うよう送迎をしている。
主な業務は、フォークリフトを使った農作物や資材の運搬、積み下ろし、取引先からの受注の管理など。注文が多い日や収穫が集中する時期には運搬する物資の量も増えて忙しくなるが、効率よく丁寧に作業を進めている。また、農作物の収穫がピークを迎える時期には、畑に出て収穫作業を手伝うこともある。10時・12時・15時の休憩時間にはお祈りを挟みながら、17時の退勤まで仕事に励んでいる。
「日本は市場の数が多いので、その分作る作物も多くて大変だと感じます。特に11~12月はブドウやキノコの収穫期のため忙しく、19時や20時まで残業する日もあります。人手が足りない時は大変ですが、大好きな野菜に囲まれて働けることにやりがいを感じます」

休日は長野の自然を満喫。2号取得に向けて勉学にも励む
長野県富士見町は、標高およそ1,000メートルの高原地帯に位置する自然豊かな町だ。そんな環境で暮らすディディさんは、休日になると、夏は近くの川でバーベキューを楽しみ、冬はスキー場で雪遊びをするなど、仲間とともに季節ごとの楽しみを満喫している。
「長野の魅力は、インドネシアではめったに見られない雪が降ることです。初めて雪を見た時は、本当に感動しました。ただ、車を運転する時はスリップなどが少し怖いですね」

現在、ディディさんは特定技能2号の取得を目指し、すでに2号を取得した先輩たちからのアドバイスを受けながら日々勉強に励んでいる。試験にはフリガナがなく、難しい漢字が多く出題されるため、漢字の勉強が中心だという。特に農業の分野では、同じ漢字でも意味が違う言葉が多く、理解するのが難しいと話す。
「同じ漢字を繰り返し読み書きして覚えるようにしていますが、やはり難しいですね。それでも、農業のことをもっと勉強したいし、チャンスがあれば大型トラックなどの免許にも挑戦したいです。日本ではできるだけ長く働きたいと考えていますが、将来的にはインドネシアに戻り、日本での経験を生かして農業の会社を立ち上げたいと思っています」
最後に、日本で働くことを目指すインドネシアの若者に向けて一言。
「日本語だけでなく、日本の文化や規律もきちんと学んでから来ることをおすすめします。私の場合は車を運転することもあり、日本とインドネシアでは運転のルールが少し違うことに驚きました。もし日本で働いたことのある先輩がいれば、その人に話を聞いておくといいですよ」
