更新日2025年07月22日
人事担当者インタビュー 上溝介護老人保健施設いずみ

生活必需品の支援や気軽に相談できる場を設けて外国人材がのびのび働ける環境を作る

神奈川県相模原市にある上溝介護老人保健施設いずみでは、2023年にインドネシアの特定技能人材の採用を開始した。さまざまな医療・介護施設で外国人材の採用や支援に携わってきた、統括事務部長の渡邊智久さんと事務部次長の野村淳基さんが筆頭となり、外国人材が働きやすい環境づくりを進めている。

生活や業務のサポートを担当する野村さんに、彼らを支援するうえで心がけていることを伺った。

日本人との親和性が高く利用者の反応も上々

――外国人材の受け入れを始めた経緯は

当施設では、2年前から特定技能人材を採用しています。それまでは日本人スタッフのみで運営していましたが、4年前に私と統括事務部長の渡邊が着任したことを機に、外国人材の雇用を始めました。

私たちは以前別の職場で外国人材の採用や支援に携わっており、彼らの仕事に対するひたむきさを実感していました。中でも親日国であるインドネシアは日本文化への理解が深く、明るく元気な性格の方が多かったので、まずはインドネシアの方々に来てもらおうと考えたのです。

第一期生はインドネシア人の知り合いから紹介を受けて採用。その後はジョグジャカルタにある日本語学校「KATANA」と連携し、渡邊が現地で面接を行い採用しています。一期生の子が知り合いに声をかけてくれたことがきっかけで、日本語学校とのコネクションが作れました。人の縁を通じてすばらしい方々に出会えたと思います。

――現場や利用者の反応は

ほとんどのスタッフが外国人と働いた経験がなく、最初は現場全体が右も左もわからない状況でした。私たちのノウハウを教えつつ、彼らの就業意欲の高さや勤勉さを伝えることで、なるべく不安を取り除きました。日本語がある程度できる人たちを採用していることもあり、これまで特にトラブルは起こっていません。

利用者さんとの関係も良好で、「日本語はもう覚えたの?」などの会話をしている姿をよく見かけます。インドネシア人スタッフは昭和の歌謡曲や平成初期のJ-POPなどをよく知っているので、昔流行った曲の話で盛り上がることも多いようです。利用者さんが若い頃のことを思い出して彼らに話したり、共通の話題として会話が弾んだりしていることも多く、温かく迎え入れられているなと感じます。

――インドネシア人の働きぶりは

皆さん働くことに対する意欲が高く、真面目で勤勉です。母国にいる家族の生活を背負っていることもあり、仕事に対する覚悟が日本人とは違います。「弟や妹を学校に行かせるために頑張るんだ」と腹をくくっていて、簡単に仕事を辞めるようなこともありません。

また、明るくてフレンドリーな人が多いのも魅力だと感じています。長く働いてもらううえで、コミュニケーションは何より大事だと思っているので、気軽に話しかけられる彼らは私たちにとってもありがたい存在です。

優秀な人たちが気持ちよく働ける施設にしたい

――面接で重視していることは

 一番重要視しているのは、元気な挨拶ができるかどうかです。第一印象を決める大切な要素なので、「こんにちは」や「よろしくお願いします」をモゴモゴせずにハッキリ言えるか、50音を正しく発音できているかなどを細かくチェックします。

もう一つ、「質問の意味がわからなかった時に自分で考えようとしているか」も見ています。質問内容がわからない、どう答えていいかわからないとなった時に、周りに助けを求めたり自分で対処法を考えられたりできる人は、仕事でトラブルが起こっても適切に対処できます。個人的には、完璧にやろうと思う人よりも、こうした不足の事態に対して柔軟に対処していける人の方が好感を持ちますね。

――外国人材が働きやすい環境を作るために行なっていることは

生活や仕事で困っていることがないか、現場と連携しながらこまめにヒアリングしています。仕事や資格の取得に関する相談があれば、私と渡邊がその内容を検討し、できる限り要望に沿えるよう対応しています。

また、気軽に話ができる場を設ける目的で、3ヵ月に1回飲み会を開いています。日本で遊びに行きたいところや最近のアニメの話をしたり、恋愛相談に乗ったりと、プライベートの話を含めていろいろと聞いています。外国人だからどうということではなく、一スタッフにとって居心地よい職場であるために、コミュニケーションの機会を作っているという感じです。

そのほかにも、宗教観などの考え方が違うことを念頭に置き、彼らが疑問を持ったことに対して「日本人の考え方はこうだから」と一方的に押し付けないように気を付けています。

――暮らしや業務面でのサポートは

外国籍の方が日本で家を借りるのは難しいので、法人名義で住宅を借りて住んでもらい、家賃の一部を補填しています。また、最低限のキッチン用品と小さな冷蔵庫、布団も提供します。

平均月収が5万円のインドネシアから来るとなると、貯金があったとしてもいきなり家電や家具を買い揃えるのはすごく大変です。さらに最初の1ヵ月は無収入なので、日々の食料を買うだけで精一杯。もし自分たちが同じ状況に立ったら「せっかく働きに来たのに、何も用意してもらえない中で暮らすのは苦しい」と思うはずです。

彼らに働いて“もらう”側の私たちがこうしたサポートを行うのは、礼を尽くすうえで当然のこと。生活基盤を整えることで、彼らが気持ちよく働けてモチベーションアップにもつながるのであれば、施設としても願ったり叶ったりです。

介護福祉士の資格を取ったあとも長く働いてもらうには、私たちもこういったサポートをしっかり行い、選ばれる努力をしなければと常々感じています。

人との縁を大切にすれば活躍のチャンスが広がる

――今後の展望は

今年7月からはベトナムの特定技能生も入社したので、せっかくならば施設の中で世界旅行ができるしくみを作りたいと思っています。当施設では利用者さんの状態に応じてフロアを分けているので、2階はバリ風、3階はハノイ風……と飾りつけをして、海外旅行をするような気分でフロア移動ができたらいいなと構想中です。特定技能人材にとっても、母国を感じながら働ける空間があることで、より働きやすさを感じていただけるのではないかと考えています。まだ夢の段階ですが、いつか実現したいですね。

外国人の方々は本当に仕事熱心で、大変な仕事を文句一つ言わずにこなしてくれるので、こうした方々を今後も採用していきたいです。彼らから選んでもらえる施設になるように、一人一人のスタッフを大切にしていきたいです。

――日本で働きたいインドネシア人に向けてメッセージを

「人との縁を大切にすれば、自分の可能性が広がっていく」ということを伝えたいです。私たちも、特定技能人材をはじめとするさまざまな方との出会いがきっかけで、すばらしい人材に出会うことができました。一つ一つの出会いを大切にして、自分のものにしていけば、日本で活躍する機会がどんどん増えていくと思います。

その他の企業