更新日2025年06月19日
人事担当者インタビュー アセットフロンティア株式会社

ムスリムが安心して働ける制度が充実しており2号の取得に必要な管理業務も早期から挑戦できる

アセットフロンティア株式会社
飲食事業本部 人事採用担当

大澤 司さん

ハラルラーメン「麺屋 帆のる」の運営をはじめ、ハラル食品の輸出事業やムスリム向けの広告事業などを幅広く展開するアセットフロンティア株式会社。顧客の9割以上がムスリムであるこの会社では、約100名の外国人材が働いている。

国内外に10店舗ある「帆のる」で外国人材の採用やサポートに携わる、飲食事業本部・人事採用担当の大澤司さんに、特定技能生を採用したきっかけや外国人材についての考え方を聞いた。

特定技能生自らが「ここで働きたい」と応募してきた

――特定技能生の採用を始めた経緯は

 当社は2015年に、鶏や和牛を使ったハラルラーメンを提供する「麺屋 帆のる」を立ち上げました。日本にはまだハラル対応のお店が少なかったので、うちのことを知ってアルバイトを希望する外国人留学生が自然に集まってきて、オープンからそうした人材を中心に運営していました。

 特定技能生を採用したのは2020年頃で、日本人向けの求人を見た外国籍の人から「自分は外食の特定技能ビザを持っているので、帆のるで働かせてほしい」と応募があったのがきっかけです。この方の採用にあたって情報を集めていくうちに、特定技能でも外国人スタッフを増やせたらいいなと思い、リファラル採用と直接応募を中心に始めました。

――どんな人からの応募が多いのか

 すでに日本で働いている特定技能生からの応募が多く、ほとんどが製造や介護などの異業種から転職してきます。そのほか、技能実習から特定技能に移行した人からも応募がきます。

当社を選んだ理由を聞くと、だいたいの人が給料面、もしくはムスリム向けのサポートが手厚いことと答えますね。同じ国籍の人が集まるコミュニティでも評判になっているようです。

アルバイトに関しては、東南アジアを中心に、世界中さまざまな国から来た留学生が働いています。インドネシアの方は、特定技能生もアルバイトも多く在籍しています。

――インドネシア人の特徴は

 仕事に対して真面目な人が多いと思います。ほかのスタッフが手を抜いていると率先して注意してくれますし、店舗のリーダーとして働いてくれる割合も高いです。

 おそらく、日本とインドネシアは仕事に対する考え方が近いのだと思います。例えば中東の方は宗教を第一に考える人が多く、仕事よりも信仰を優先することがあります。インドネシアのスタッフも信仰心は篤いのですが、比較的寛容なところもあって「自分の宗教的慣習とは異なるけれど、仕事だから仕方ない」と割り切ってくれています。もちろん、個人の主義や考え方によって違いますし、会社としてそれを強制する気は一切ありませんが、彼らなりに考えて行動しています。

双方の文化を尊重しながら働きやすい環境をつくる

――採用で重視するポイントは

 日本にいる目的と当社で働きたい理由は必ず聞きます。明確に答えられる人ほど、仕事に対して真剣ですから。逆に言うと、目的や理由があまり定まっていない人は仕事への向き合い方もあいまいになると思っています。

 同じような理由で、今後のキャリアプランについても確認します。特定技能2号を取得する意志があるか、インドネシアに帰る予定があるなら自国で何をしたいかを詳しくヒアリングしていますね。

――日本語レベルはどう見ているか

 社員としてコミュニケーションが取れるレベルであれば、N4でも採用しています。当社のお客様は9割以上が外国人なので、そこまで日本語を重視していません。特定技能生の中には、とても真面目で働き者なのに日本語があまり話せない人もいると思うんです。日本語ができる、できないという観点だけで採用の間口を狭めてしまうのはもったいないですし、外国人メインの業態であることを生かして、彼らが気兼ねなく働ける環境を作りたいと考えています。

 ただ現時点では管理職が全員日本人なので、昇進したいという思いがあるならば、ある程度日本語は話せた方がいいと思います。

――外国人材向けの教育制度は

 特定技能2号を取得する意志がある人には、早い段階から店長代理として発注などの管理業務を任せています。彼らだけに負担がかからないよう、英語のマニュアルを用意して、アルバイトにも効率よく業務を分散できるような体制を整えています。

 当社は日本人の社員が少ないので、私やエリアマネージャークラスの人間が、定期的に店舗を回ってお店の状況をヒアリングしています。その時に試験勉強の進み具合を確認し、「1年でこのスキルを習得しましょう」といったアドバイスをするなど、2号の受験に向けたサポートも行います。

――仕事を指導するうえで気を付けていることは

 国ごとに文化や考え方が違うことを当たり前だと思いながら、大らかな心で接するようにしています。例えば、日本は遅刻や欠勤に対して非常に厳しく評価しますが、スタッフの中には1時間ほど平気で遅刻してくる人もいます。そんな時は頭ごなしに怒るのではなく、認識の違いを伝えたうえで、お店に迷惑がかかってしまうことを理解してもらいます。

 一方的に日本の考え方を押し付けるのではなく、彼らの文化では何がNGなのかを聞いて、そのうえで最低限のルールを守ってもらう……という感じですね。

――その他のサポート制度は

 まかないは完全1食、朝から晩までのシフトのスタッフには2食提供しています。ムスリムが日本で暮らす中で一番困るのが食事ということもあり、非常に喜んでもらっていますね。一番人気はやはりラーメンですが、勤務歴が長い人はご飯の上にから揚げをのせたり、スパイシーソースをかけたりと、オリジナルの組み合わせを作って楽しんでいるようです。

 また、ほとんどのお店にウドゥ付きの礼拝スペースを設けています。

やる気がある人には挑戦の機会を与えていきたい

――今後の採用について考えていることは

 当社には現在8名の特定技能生がおり、ほぼ全員が2号の取得に向けて頑張っています。彼らを最大限サポートしながら採用活動も続けていきたいです。

今後も日本全体で特定技能生が増えていくでしょうし、それに伴って2号も取得しやすくなるのではないかと思っています。私は「やる気がある人にはどんどん挑戦してもらうべきだ」と思っているので、彼らが目標を達成できるよう、会社としてもスキルアップできる機会を作っていきたいです。

 また、当社には留学生アルバイトもたくさんいます。中には「今の学校を卒業したら帆のるで働きたい」と言ってくれる人もいるので、こうした希望がある人には特定技能の資格を取れるようにサポートしていきたいと思っています。

――日本で働きたいインドネシア人へメッセージを

 少しでも日本に興味がある人や、日本で働くことに夢を持っている人は、失敗を恐れずどんどんチャレンジしてほしいです。外国人材が働きやすい環境を整えている日本企業はたくさんあると思うので、「自分はここで働きたい」というところがあったら、まずは履歴書を送ってみるといいでしょう。そのくらいやる気がある人は、企業にとっても魅力的です。

 また、日本の文化に慣れ親しみたいと考えるなら、自分から暮らしになじむ姿勢を持つことが大事です。同じ国の人がいるコミュニティに身を置くのもいいと思いますが、時には自分から積極的に外に出て、日本の文化を学び体験する機会を作ってみてください。

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