株式会社ヤオコーは、埼玉県を中心に関東1都6県で約200店舗のスーパーマーケットを運営。東松山市と熊谷市にある自社工場「ヤオコー デリカ・生鮮センター」では、100~300名の外国人材が製造業務に従事している。熊谷デリカ・生鮮センター長の窪田栄治さんに、インドネシア人材を積極的に採用する理由や仕事の評価などについて伺った。
約1年で60名以上のインドネシア人材を採用
--外国人材の採用を始めた経緯は
2021年に熊谷センターが開業する時にパートナーさんを募集したのですが、予定人数を確保できませんでした。東松山センターでは以前からベトナムの技能実習生を採用していて、評判がいいことも聞いていたので、ここでも外国人材をお願いすることにしました。
当初はミャンマー人材を予定していましたが、軍事クーデターの影響で来日に遅れが発生。人事部に相談したところ、スーパーの各店舗ではすでに大勢のスリランカ人が働いていたことから、最初はスリランカの1期生を25名採用しました。
--現在は何名の外国人材がいらっしゃいますか
熊谷センターの総従業員数が270名で、そのうち外国人材はスリランカが40名、インドネシアが62名。大半が技能実習生ですが、スリランカ人の特定技能生も6名います。ちなみに、東松山センターでは約300名、ヤオコー全体で500名以上の外国人材が働いています。
インドネシア人材の受け入れを始めたのは、2024年の6月からです。私と人事部の担当者で現地面接を行い、1期生を10名採用しました。この人たちが非常に優秀だったので、2025年4月に2期生、8月に3期生、10月に4期生と立て続けに採用して、1年ちょっとの間に60名強まで増えました。

--面接はどのように行いますか
質問は基本的に日本語で行い、必要に応じて通訳を入れています。評価のポイントは、現在の日本語のレベルのほかに、学習意欲や日本への関心度の高さなどですね。日本語学校の授業以外で自主的にどれくらい勉強しているか、将来的にどのレベルを目指しているかは必ず聞きます。
働いた経験のある人には、どういう仕事をしていて、そこで何を学んだか、何を大事にしていたかなども確認します。また、手先の器用さを見るために、こちらが指定したグラム数通りにマッシュポテトをボール状に成形するといった、簡単な実技テストもやっていただきます。
--外国人材が担当している業務は
工場1階の野菜加工部門ではサラダの製造、2階の製麺部門では中華麺やうどんの製造、3階の肉加工部門では惣菜肉の下処理から製造を担当しています。従業員の配置に関しては適性を考慮しながら、商品数や業務量などの状況に応じて階を異動してもらうこともあります。
--現在のサポート体制を教えてください
現在はスリランカの母国語通訳が1名常勤しており、インドネシアもまもなく配属する予定です。通訳がいなくても現場でOJTをしていますが、日本語では細かいところまで伝わりません。機械を多く扱うため労災事故の危険もあるし、食品工場の場合は水濡れした床で転倒することもあります。普通のオフィスとは違ったリスクもあるので、今後は通訳を通して、注意喚起や衛生管理などをよりしっかり行なっていきます。
スリランカの通訳の方は日本語の勉強会を開いてくれているので、今後はインドネシアの人たちにも社内で学べる機会が作られると思います。

指示待ちでなく自ら考え、行動できる人材を求む
--インドネシア人材はどのような点が優秀だと感じますか
現地の送り出し機関の教育がよいので、日本語の習得度が比較的高いですね。性格的には真面目でおとなしく、協調性があってトラブルなどは少ないので、日本にはなじみやすいかと思います。
また、総じて賢い人が多く、一生懸命働いてくれますから、当社にとってはとても大切な戦力です。私としては引き続きインドネシア人材を採用していきたいですし、技能実習期間が修了した後は1人でも多く特定技能を取得して、ぜひ日本に残って働いてほしいと思っています。
--彼らに期待したいことは
熊谷デリカ・生鮮センターの業務はシフト制で、1日100人近くが出勤してきます。それだけの人数に対して数人の管理職では、なかなか面倒を見られない部分も出てきます。ですから規則通りに作業ができる上で、例えば自分の仕事が早く終わったら別の仕事を探してこられるような、指示待ちでなく“気が利く”人がいると非常に助かります。
当社の社是に「明朗なる人生こそ明朗なる店をつくる」とあります。この言葉は「明るく前向きな生き方をしている人こそが、誠実で信頼できるお店を作れる」という意味です。外国人材にとっても、自分が成長するためにどんなスキルが必要か考えて、新しいことにチャレンジする気持ちを持つという意味で当てはまると思います。私も、自ら考えて行動する人材を評価する方針です。

--外国人材へのキャリアアップ支援や制度について、今後考えていることは
パートナーさんに実施している能力に応じた等級制度を、外国人材にも適用しようという話を人事部と相談して進めています。実際に昨年から今年にかけて、テスト的に全員の評価を行いました。基準に達した人にはサブリーダーやリーダーの役職・手当の付与や時給を上げるなどの対応をすることで、評価制度に結びつけていこうと考えています。2026年の春から本格的に運用を開始する予定です。
--これから日本で働きたいと考えているインドネシア人材に向けて、メッセージをお願いします
日本には「郷に入っては郷に従え」という言葉があります。来日後は日本の習慣やルールをいち早く身に付け、慣れることが重要です。私たちにはインドネシアの皆さんの力が必要ですし、ぜひ日本のことを好きになっていただきたいと思っています。そのために全力でサポートしますので、私たちと一緒に安全に楽しく働きましょう。
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