地元の工場を退職後に特定技能を取得して来日

ミアさんはインドネシアの高校を卒業後、地元の工場に就職したが、勤務体系や給料などの労働条件が厳しかったため4ヵ月で退職。日本で働いていた親戚の人に勧められたことがきっかけで、日本の会社に就職することを希望して、挑戦することにした。
「ちょうどコロナ禍だったこともあって、インドネシアではいい勤め先もあまりなかったし、より給料が高い日本で就職できたらいいなと思ったんです」
週に3日ほど日本語学校に通学しながら、ビルクリーニングの特定技能1号を取得。JFT(国際交流基金日本語基礎テスト)のA2にも合格した。
「私はもともときれい好きですし、実家でも母を手伝って毎日掃除をしていたので、特定技能の職種の中から選ぶとしたら清掃業が合っていると思いました。ビルクリーニングの資格を取るのはそれほど難しくはなかったけれど、日本語の勉強はとても難しかったですね」
学校から紹介されて、いずれもホテルやビルなどの清掃スタッフを募集していた3社のオンライン面接を受けた。その中から、東京本社をはじめ国内数ヵ所に支店がある富士見産業株式会社に採用された。
「2社が東京で1社は北海道の会社でしたが、場所はどこでもよかったです。それよりも合格したのは1社だけだったので、決まった時はすごくうれしかったです」
初任地は長野県のリゾートホテルで客室清掃を担当
2022年11月に来日したミアさんの最初の勤務地は、自然豊かなリゾート地として知られる長野県諏訪郡で、山の上にあるファミリー向けの大きなホテルに配属された。通勤はホテルの送迎車で街中から25分ほどかかった。
ホテルの業務はフロアごとにチームが組まれ、それぞれ1日に25室ほど担当。残業も多く、朝から夜の10時まで働くこともあった。また当初は長野の冬の寒さにも非常に驚いたという。
「生まれて初めて見た雪は、すごくきれいで感激しました。でも、慣れない雪道で転んだり、寒過ぎて鼻血が出たりしたこともあったんですよ。仕事も大変だったけれど、辞めたいとは思わなかった。給料がよかったから頑張れました」
そして入社から2年を迎えようとしていた頃、神奈川県の工場清掃勤務への異動を打診された。外国人スタッフを初めて配属する現場だったため、信頼のおける優秀な社員に任せたいということで、ミアさんが抜擢されたのだ。
「会社からお話をいただいた時、断ることもできましたが、今までとは違う新しい現場を経験してみたいと思ってお受けしました」

神奈川県内の工場に異動後、仕事も生活も快調
2024年11月に異動後、現在は自動車や鉄道、飛行機などの部品を製造している某企業の工場で勤務。住まいからは自転車で15分ほどだ。勤務時間は8時50分~16時10分で、5階建ての施設のトイレ、洗面所と廊下の清掃業務をインドネシア人の先輩と2人で担当している。
「ホテルの時はお客様のチェックインの前までに必ず終わらせなければいけないので、常に急かされながら仕事をしている感じでした。工場では時間に追われることもなく、じっくり清掃に取り組むことができて、精神的にも体力的にも働きやすいと感じています」
勤務体制も以前はシフト制で休日の曜日がまちまちだったが、今はほぼ毎週土・日曜日に決まっている。
「休みの日は東京にいる友達と一緒に遊んだりしています。いろんな食べ物がある新大久保が特に好きで、もう5回くらい行きました。一番訪れてみたいのは、竹林の小径がとても美しい京都の嵐山です」
工場責任者からも「きちんと挨拶ができるし、清掃も大変きれいにしてくださっています」とのお墨付きをいただいているミアさんだが、今後については考え中。実はミアさんと同じ特定技能1号として北海道で働いている男性と、先月インドネシアで婚約式を行ったばかりだという。
「5年の在留期間を終えた後に結婚しようと考えています。その間に彼が特定技能の2号を取得できたら日本で暮らせるかもしれないし、インドネシアに戻るかもしれない。相手に合わせる感じです。これから日本で働きたいという方には、日本語は本当に大事なので、来日前までにできるだけ勉強してきてくださいとお伝えしたいですね」
