インドネシアで長年勤めた法務職から介護の仕事に転身して日本で新たな経験を積み重ねたい

ムハッマド・ファホミ・ザイミルさん
(MUHAMMAD FAHMI ZAIMIR)
1991年生まれ
スラウェシ島出身
独学で日本語を学び特定技能の介護を取得
インドネシアの国立大学の法学部出身のムハッマドさんは卒業後、インドネシアにある建設会社の法務部門に勤務していた。約8年の契約期間を終えて退職すると、次の目標を日本で働くことに定め、独学で日本語の勉強を開始。わずか3ヵ月でJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)に合格し、特定技能の介護も取得した。
「これから新たな経験を積みたいと考えた時、インドネシアよりも日本の方が選択肢が多かった。テレビやインターネット、YouTubeなどで日本で生活しているインドネシアの人たちの様子を見て、とてもいいなと思いました。介護の分野を選んだのは、困っている高齢者の方々を助けることができる仕事がしたかったから。また、日本の文化や労働倫理を学ぶことにも興味がありました」
Facebookに募集要項が掲載されていた上溝介護老人保健施設いずみ(以下、老健いずみ)に応募すると、日本から採用担当者が訪れ、インドネシアで面談が行われた。その結果、20名ほどの志望者の中からムハッマドさんが採用された。

スマートフォンを活用して入所者の名前を覚える
2024年10月にムハッマドさんが入社した老健いずみは、神奈川県相模原市にある。4階建ての施設内に90床を備え、自宅復帰・自立支援を目的とするロングステイやショートステイ、デイケアなど、さまざまなサービスを行なっている。
はじめの5ヵ月は先輩に付いて、認知症の人が入所する4階を担当していた。業務内容が定型的で、入所者と積極的にコミュニケーションを取る機会が求められるからだ。先月からは透析患者が入所している3階の担当に変わり、仕事も一人で任されるようになった。
日本語の聞き取りはほぼ支障ないが、会話や漢字はまだ苦手なムハッマドさん。スマートフォンの翻訳機能を活用するなど、自分で工夫しながら業務に取り組んでいる。
「先輩方はすごく忙しいので、わからないことがある度にいちいち質問するのではなく、自分のできる範囲で考えて仕事をしています。4階でも3階でも、担当する入所者さんの名前は全部覚えました。そして、お茶やおやつを配る時は必ず『○○さん、おせんべいですよ』というように、お名前を呼びながらお声がけしています」

職場から徒歩1分の一軒家で快適な共同生活
老健いずみの勤務シフトは早番・遅番・夜勤があるが、入社1年目のムハッマドさんは今のところ7時~15時45分の早番のみ。休みは月によって曜日の違いはあるが、完全週休2日制だ。
「介護の仕事は初めてでしたが思っていたより大変じゃないし、だいぶ慣れてきたので困っていることなども特にありません。もともと人のお世話をすることが好きで、仕事が面白いと感じていますし、お給料の面でも満足しています」
住まいは施設のすぐ隣、歩いて1分足らずの一軒家でインドネシア人の先輩3人と同居している。それぞれ個室があり、食事も自分が食べたいものを自炊するルールなので、あまり気を使うことなく快適な共同生活を送っている。
ムハッマドさんは日本の「食」にも興味があり、来日前からラーメンや寿司、スイーツなどを食べることを楽しみにしていた。また、外国人に人気の東京スカイツリーや渋谷、冬には雪がたくさん見られる東北地方にぜひ行ってみたいという。
「日本は食べ物がおいしくて種類が豊富。街がきれいなのもいいですよね。介護福祉士の資格を目指すかどうかはまだ決めていませんが、日本の生活はとても楽しいので、ずっと住み続けたいと思っています」
