子どもの頃からの夢を叶えて特定技能で日本初の女性バス運転士としてデビュー
農作物を積んだトラックを運転する叔父の姿に憧れて
日本初の“特定技能外国人女性バス運転士”を目指して、東急バス株式会社の神奈川県川崎市虹が丘営業所で研修に取り組んでいるのが、マハトミさんだ。
東京都城南地区および神奈川県川崎市・横浜市の東急線沿線を中心に、路線バスや空港リムジンバス、高速バスなどを運行する東急バスは、2024年3月より自動車運送業が特定技能1号に追加されたことに伴い、外国人材の運転士候補者の採用を開始。マハトミさんは同年10月にインドネシアで実施された選考試験に合格し、2025年9月に入社した特定技能人材3人のうちの1人だ。
運転士になりたいと思ったきっかけは、農業を営んでいた叔父が出荷用の作物を積んだトラックを運転する姿がとてもカッコよかったからだという。

「インドネシアでは大型の車を運転する女性はあまりいなくて、環境的にも危ないと言われるんです。その点、日本は交通事情もいいし女性ドライバーも大勢いるので、日本でなら自分の夢が叶えられると思いました」
また、子どもの頃からよく日本のアニメを見たり、音楽を聞いたりしていたマハトミさんは、日本の文化や日本語に対しても深い興味を抱いていた。高校の外国語の授業で日本語を選択すると、大学では日本文学を専攻。卒論のテーマには映画『君の名は。』を選ぶなど、その憧れは一貫して強かった。
とはいえ、いきなり日本で働ける自信はなかったため、一旦は母国のカスタマーセンターに勤務。その後、3ヵ月間ほど集中して日本語を学んでから日本語学校に就職した。そこで日本語を教えたり、日本語の教材を作ったりする仕事をしている時に、東急バスの運転士募集を知った。憧れの日本で、ずっと夢だった運転士の仕事に挑戦できるチャンスを目の前にした彼女は、「これは私が行くしかない!」と確信したそうだ。
日本の交通ルールに戸惑うこともあった実車研修
マハトミさんは、バス運転士として入国するために必要な母国での普通自動車免許を取得し、日本語能力試験(JLPT)のN3および特定技能1号評価試験にも合格。日本での大型二種免許取得のため、特定活動の在留資格を取得して来日した。その後、外免切替、大型二種免許を取得してから4〜5ヵ月間、社内で新任運転者研修を受講。これを修了し、在留資格を特定技能に変更することで、バス運転士として独り立ちしてデビューできるようになる。
2名のインドネシア人男性社員と一緒に2026年3月の運転士デビューを目指すマハトミさんは、約1ヵ月の座学を終えて、12月からは実車教習中。路線バスの通常ルートにて教習を行い、最終段階である教習を担当する運転士同乗のもとお客さんを乗せた教習を経れば、いよいよバス運転士としてデビューできる。

「実車の教習では、日本とインドネシアの交通ルールや意識、文化の違いに戸惑うことがあります。信号は特に難しいです。例えばインドネシアの私が住んでいた地域では、右折の場合、反対側は赤なので対向車を気にせず進行しますが、日本は青なので必ず一旦止まって確認してから進まないといけません。左折の場合だと、日本は歩行者の信号も青ですが、インドネシアは赤になるので歩行者にそれほど注意しなくても大丈夫だったんです。また、インドネシアには一時停止線がない場合が多いです。そのため、交差点や坂道での発進のタイミングがなかなかつかめず苦労しました」
それでも、繰り返し熱心に教習に取り組んできたマハトミさん。教習を担当した運転士から「今ではだいぶ慣れてきて、とても優秀です」とのお墨付きをもらうほどの成長を遂げている。

女性のバス運転士がどんどん増えてほしい
現在、東急バスに在籍している女性運転士は約60名で、全体の3%程度。虹が丘営業所には2025年3月まで男性運転士しかいなかったが、現在はマハトミさんを含めて4名の女性運転士が在籍している。
「運転士の場合は勤務時間がみんなバラバラなので、毎日会えるわけではないのですが、休憩時間に女性用の控室で一緒になった時に女子トークをしたり、職場のルールなどについて教えてもらったり。そういう時間はすごくリラックスできますし、やっぱり女性の先輩がいることは心強いです」
東急バスでは、女性社員の受け入れ体制をさらに進めていく方針。特定技能では日本初の女性バス運転士になるマハトミさんも、自身に続く人たちがどんどん増えてほしいと思っている。

「昔のバスはマニュアル車しかなくて、ハンドル操作などにも結構力が必要だったそうです。今はオートマチック車もありますし、マニュアル車のギアチェンジも簡易なタイプになっているので、男性との体力的なハンディもほとんどないんですよ」
マハトミさんは、バス運転士の仕事のどんなところに魅力を感じているのだろう。
「私は運転すること自体が大好きなので、毎日とても楽しく仕事をしていますが、何よりお客さまを目的地までしっかりお届けすることにやりがいを感じられると思っています。これからも安全運転を第一に、お客さまに安心してご乗車いただけるように努めていきます」

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