外食業の2号試験に一発合格。後輩の相談にも乗りながら繁忙店の副店長として活躍
日々の仕事を学びに変えるのが2号取得の秘訣
2025年10月、特定技能2号試験に合格したインドネシア人のムハマドさん。特定技能2号は1号よりも高い専門性が求められる難関資格であり、分野ごとに定められた試験への合格が必要だ。外食業においては、2025年度の試験合格率が57.8%で、4割以上が不合格となっている。
外食の2号試験では、普段の業務に関係する接客・調理だけでなく、「店舗運営」など店長クラスの知識が問われる科目も対象となる。また、日本語能力試験(JLPT)N3以上を取得していることも必須だ。そうした条件もあって、複数回の受験を経てようやく合格する人も多い。
そんな中、ムハマドさんは一発で合格を果たした。彼にその秘訣を聞いたところ、日々の業務を単なる作業にせず“新しい知識を得る場”に変える姿勢が大事だと話す。
自身を「体で覚えるタイプ」と分析するムハマドさんは、副店長としての実務を通じて発注や在庫管理といった店舗運営のノウハウを吸収していった。N3についても、接客やスタッフとの対話など、日々の暮らしを学びにつなげたという。

「仕事の後に勉強時間を確保するのは体力的に大変ですし、疲れていると内容が頭に入りません。だからこそ、現場で実際に手を動かして覚え、理解が足りない部分を勉強で補うようにしていました。未経験だった人件費の計算やスタッフ教育には苦労しましたが、シフト作成を手伝いながら『どうすればコストを抑えられるか』を考えることで、試験対策に落とし込んでいきました」
コロナで夢を絶たれた時、日本で働く選択肢が生まれた

今でこそ日本になじんでいるムハマドさんだが、実は当初、日本で働くことは選択肢になかった。
最初の夢は、インドネシアの高級ホテルで料理人になること。そのために料理学校へ進学し、2020年からはバンドンのホテルにあるビュッフェレストランでインターンを開始した。社員登用のチャンスを信じて働き始めた矢先、新型コロナウイルスのパンデミックが直撃した。
利用客の激減によりホテルは人員削減を余儀なくされ、ムハマドさんの契約も打ち切られてしまう。夢への道が途絶え、国内での再就職も厳しい状況下で浮かんだのが、特定技能として日本で働く道だった。子どもの頃に見た日本のアニメの影響で文化や食に親しみがあったこともあり、「料理学校で学んだことを生かし、幼い頃から興味があった日本で働いてみたい」という気持ちが強まっていった。
「当時は仕事ができる状況ではなかったので、ずっと特定技能1号や日本語の勉強をしていました。勉強する時間はあったけれど、試験会場の予約がとにかく大変でしたね。少しでも感染者数が増えると予約が自動でキャンセルされるため、受験のチャンスをつかむこと自体が大きなハードルでした」

2021年に資格を取得し、2023年2月に来日。当初は寿司居酒屋チェーンに勤務したが、深夜までおよぶ勤務スタイルを見直し、より柔軟に働けるオイシーズ株式会社へ転職した。
夢への道が閉ざされても諦めずに努力を

特定技能2号となった今も、現場での調理や接客、副店長としての業務に励む日々は変わらない。2025年12月からは、観光客やファミリー層などの幅広い世代が訪れるダイバーシティ東京店へ異動し、フードコートという活気ある環境で腕を振るう。
一方で変わったのが、外国人スタッフの目線だ。難関試験を一発で突破した実績から、他店舗のスタッフからも勉強法や専門用語の覚え方を相談される機会が増えた。
「あまり人に頼られる経験がなかったのでうれしいですし、自信を持てました。人に教えることは自分の成長にもつながるので、僕でよければ喜んで力になりたい」

今の目標は、マネジメントの業務を覚えて店長になることだ。「2号を取得したからには、日本で長く働き、着実にキャリアを積み上げていきたい」と話す。プライベートではYouTubeでの発信も行なっており、休日には温泉街や繁華街で見つけた日本の魅力を、母国に向けてシェアしている。

コロナ禍で一度は夢を絶たれながらも、日本で新たなキャリアを切り拓いたムハマドさん。最後に、日本で働くことを目指す若者に向けてアドバイスをくれた。
「夢や目標を持つのは大切ですが、そこに辿りつくのは本当に大変。がんばれば成功するとは限らないし、歩んできた道が突然閉ざされてしまうこともあります。そんな時こそ、諦めずに夢を信じ続けてください。その気持ちさえあれば、どんなにつらいことがあっても乗り越えられます」

※内容は取材当時(2026年1月)のものです。
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