「多くのことが秩序立てて行われている」日本のイメージ
西ジャワのスカブミ市出身のフィルサさんは、2024年に技能実習生として来日した。アニメやドラマで日本文化への憧れを持つ友人も多いが、フィルサさん自身は、サブカルチャーとはまた異なるイメージを日本に抱いていたという。
「日本社会は、いろいろなことが秩序立てて行われているという印象があったので、しっかりした秩序のある社会の中で働くのは楽しみでした」
フィルサさんが働くことになったのは、静岡県掛川市で「スーパーサンゼン」を運営する株式会社三善。こだわりの食材や、地域密着の商品開発で独自のポジションを確立しているスーパーで、2017年から継続的にインドネシアの技能実習生を受け入れている。フィルサさんは惣菜部門に配属された。基本的なスケジュールは8時から始業して、11時まで調理に専念。昼休憩を1時間挟んで、17時まで翌日の仕込みを中心に仕事を続ける。
「自分のスキルや能力に合った仕事だといいと思っていましたが、社員やパートの方、また技能実習生の先輩たちの指導のおかげで、楽しく働くことができています」

ファッション関連の買い物や着物体験で気持ちを高める
フィルサさんたち技能実習生は、会社が用意してくれたアパートに二人一組で住んでいて、先輩から仕事のアドバイスや共同生活のルールを自然に吸収できるようになっている。
オフは外出でリフレッシュすることが多い。最初は電車の乗り方にも戸惑ったが、これも先輩に教えてもらい、今ではどんな乗り物も自在に使いこなす。
「良く出かけるのは(近隣の)浜松市で、駅ビルで買い物をします。洋服やバッグ、靴など、ファッション関連が多いです」
浜松には、インドネシア人が経営している本格的なインドネシア料理店がある。この情報もまた、三善で働くインドネシアの技能実習生が代々口承で受け継いできた。
「一緒に働いている同郷の先輩のチャヒャさんが、そのまた先輩から教えてもらったお店です。でも今度は私が、次に来る後輩を連れて行ってあげる番です。その日が楽しみですね」

三善では毎年2月頃に、店舗を一日休業にして掛川駅前のホテルの会場で経営方針発表会と懇親会を行う。これには従業員全員が参加するのが恒例だ。
しかし2025年は開催が3月にずれこみ、ちょうどラマダン(断食月)と重なってしまった。戒律を厳格に守る三善のインドネシア人技能実習生は食事会に参加できない。そこで三善は、代わりに楽しんでもらう機会を作ろうと、着物レンタル会社を手配して、掛川城の桜を背景に記念撮影をする場を設定した。食事会のあとのビンゴ大会に再合流した彼女たちは、着物姿のまま一人ずつ登壇して自己紹介し、非常に印象深い一日になったという。
「ファッション好きの私にとって、着物を体験できたのはとても感動的でした」

惣菜部門での仕事を通じて、フィルサさんは日本料理への関心が高まったという。
「もっといろいろな日本の料理を覚えたいと思い、仕事が終わったあとやお休みの日も、インドネシア料理のお店だけでなく、日本の食事を積極的に食べて勉強しています。日本では、自分の頑張り次第で、仕事もオフも、どんどん楽しいものにすることができると実感しています」