結婚を機に来日、パートタイムで働きハウスキーピング業務歴10年。後輩の指導役も務める

小笠原亜仁さん
(OGASAWARA ANI)
1980年生まれ
バリ島出身
バリ島で出会った日本人の男性と結婚
世界有数の観光地として人気の高い、インドネシアのバリ島で生まれ育った小笠原さん。実家の近くにゴルフ場があったことから、日本人のスタッフや観光客と「こんにちは」「ありがとうございます」などの簡単な日本語を通して触れ合う機会がよくあり、自然と日本を身近に感じるようになった。
高校卒業後は専門学校に進み、そこで学んだことを生かして経理事務所に就職。その頃、旅行でゴルフ場を訪れていた日本人の男性と出会い、交際がスタート。結婚が決まると週に2日ほどレッスンを受け、日常会話には困らないレベルの日本語を習得した。2008年、結婚と同時に来日。ご主人の勤務地の東京都内で暮らし始めた。
結婚後しばらくは主婦業に専念していたが、クリスチャンの小笠原さんは毎週日曜日に通っていた教会で仕事を紹介される。

「教会に来ているインドネシア人のお母さんたちはアルバイトをしている人が多くて、清掃の仕事に一緒に行きませんか? と誘われたんです。それでずっと家にいるよりはいいし、自分もやってみたいなと思いました」
2014年、ビルメンテナンスやホテルのハウスキーピングなどの業務を行う新日本ビルサービスにパートタイマーとして入社した。
ビジネスホテルと学校の清掃業務を掛け持ち

最初に配属されたのは新宿の有名ホテル。5つ星の高級ホテルとあって客室も広かったため、かなりの重労働だった。
「ベッドが4つもあるファミリータイプの部屋だと、すべての作業を終えるのに1時間半くらいはかかりました。おかげで3ヵ月で6kgも痩せたんですよ。でも、もっと早く、うまく・綺麗に仕上げられるように勉強して、だんだんできるようになりました」
現在は1日2ヵ所の業務を掛け持ちしている。まず早朝6時から港区の私立高校で職員室や共有ホール、トイレなど、教室以外のスペースの清掃やゴミ捨てを行う。9時に終了すると、電車で移動して五反田のビジネスホテルへ。9時半~14時半まで、一人で14室ほどのハウスキーピングを担当する。
「ビジネスホテルの客室はあまり大きくないので、1室の所要時間は約20分、汚れがひどい時は30分。連泊の部屋は特に注意が必要です。基本的にお客様の私物を触ったり、動かしたりしてはいけないのですが、判断が難しい場合は所長やホテルのフロントに相談するようにしています」
日本で長く働き続けるために必要なこと
来日後に小笠原さんが嗜むようになった日本の文化の一つが「着物」。ご主人の知り合いの着付けの先生に習って、今では1時間足らずで一人で着物を着ることができる。浴衣を着てお祭りに行くのはもちろん、知人の結婚式には訪問着で出席するそうだ。
在日17年、勤続10年を数える小笠原さん。日本で生活し、長く働き続けるためには日本のルールやマナーを必ず守らなければいけないという。
「私は主人にしっかり鍛えられましたが(笑)、インドネシア人はやや緩いところがあるので。例えば、インドネシアではアポなしでいきなり友達の家に遊びに行っても全然大丈夫だけど、日本では失礼になったり。多分、インドネシア人も頭ではわかっていると思うけれど、実際にできるかどうかが大事ですよね」
職場では、学生のアルバイトや後輩のスタッフの指導役も務めている。締めるべきところはビシッと締め、よくできた時はちゃんと誉める、厳しくも優しい先輩である。

「10年間いろんな人を見てきましたが、私が教えて1週間で辞められた時はがっくりしましたね。給料をもらいながらプロのハウスキーピングの技術を覚えられるのに、どうして頑張らないんだろうと。これから日本に来て長く仕事をしたいのであれば、一度注意されたことは、きちんと反省して直すこと、同じ間違いをしないこと。それができなければ続かないと思います」